概       要

はじめに
鹿児島大学自然科学教育研究支援センターアイソトープ実験施設は、本学の放射性同位元素(RI)や放射線を利用する教育研究に供するとともに、安全管理に関し中心的な役割を担い、もって教育研究の進展に資することを目的に次の目標を掲げる。
@ 学内の部局放射線施設と連携して放射線管理に協力し、全学及び一般公衆の安全を守るのに貢献する。
A 本学のRI及び放射線取扱者に対する教育訓練を各部局と協力して実施し、並びにその取扱いに関する正しい知識や技術の普及を図る。
B 最新の実験法等の情報の収集・提供を行うとともに、先端的研究分野でRI及び放射線を安全かつ有効に利用できるように支援する。
C RI並びに施設・機器等を総合的に管理し、これを諸分野の教育・研究の共同利用に提供するなど、RI及び放射線の利用に関しての総合的な業務を行い、本学の教育研究の一層の進展に資する。

鹿児島大学郡元地区RI施設の将来ビジョン

1.はじめに
  ここ十数年来の非密封RI利用者の減少による施設廃止・統合を経て、4施設あった鹿児島大学の放射性同位元素利用施設は、現在、医系地区の施設と主に理・工・農・水産・教育学部の教職員・学生が利用する郡元地区RI施設の2施設に集約されている。また、メインユーザーが高齢化するなか若い研究者の利用の見通しも立っていない。このような背景のもと、郡元地区RI施設は単に施設の生き残りを模索することを主眼としない、積極的な施設運用の方策を施設の将来ビジョンとして打ち立て、随時実行中である。
2.施設の将来ビジョン
  郡元地区RI施設の描く将来ビジョンを図に示した。以下、4つのテーマの中からいくつか紹介する。放射線利用の研究は、従来型のトレーサー利用から加速器等全国共同利用施設を利用した共同研究へと変遷している。図 @ の「学外施設利用研究支援」のひとつに、グループとして取り組んでいる原子力機構施設利用共同利用研究「イオンビームによる効率的な突然変異体作出法及び農業有用特性を有する植物の開発」があり、コメやトルコキキョウの新しい品種が育成中である。
  放射性同位元素利用施設の主たる役割である A の「施設利用研究支援」は、従来からの非密封RI利用の支援に加え、演習を伴うエックス線安全取扱教育の充実を図ることにしている。また、学内にあるGe半導体検出器を施設に集約し、更に新たな検出器の導入により5台体制となる。充実したGe半導体検出器の整備・運用を図る経費を補填するためその利用を広く学外に開放する予定であり、加えて、機器利用を推進する学内プロジェクトを開始している。そのほかメスバウアー分光装置の導入が確定し、新たな研究分野での利用を見込んでいる。課題は、施設の保有するコバルト 60とセシウム 137のガンマ線照射装置が導入後すでに35年を経過しており、線源の更新を図るか廃棄するかの選択を迫られていることである。
  原発立地県という特性から B の「地域連携」は本学施設の今後の核となるものである。施設の教職員は、大規模・複合化する災害に対応した地域防災体制の確立とそれを支える総合的防災教育研究の推進のために設立された鹿児島大学地域防災教育研究センターの兼務であり、同センター放射線災害分野の一員として原子力防災教育や鹿児島市との連携を開始している。今後は大学構内にモニタリングポストの設置を計画している。
  図 C の「放射線教育」は施設が特に重点的に取り組んできているものである。小中学生を対象の公開講座 夏休み体験学習「放射線ってどんなもの?」は平成25年度実施で11回目を迎えた。同講座の延長上にある小中学校への出前講座や教育職員対象の「放射線を理解する教育」セミナーも展開中である。また、教材の貸出し事業も予定している。過去に実施した鹿児島県内小中学生、教育職員、ならびに本学の理工系学生対象の放射線リテラシーを問うアンケート調査を通して、子どもたちのみならず一般の人々の放射線の基礎力の不足は明らかである。大学放射線施設が子どもたちと一般の人々の正しい放射線の理解に果たす役割はますます大きくなるものと思われる。


郡元地区RI施設の将来ビジョン


【スタッフ】
准教授 福徳 康雄
技術専門職員 尾上 昌平(農)
事務補佐員 下夷 孝子